最後のホハレ峠〜・王子製紙作業道跡・〜1

 幾多の廃道探索家を魅了し続けてきたホハレ。
今日、我々の中のホハレに終止符を打つべく再び廃道
特別探索隊を編成してこの地へやってきたのだ。
 ホハレ林道起点に到達した時の気温は1℃。倉庫の
軒下に置いてあった瓶の中の水の表面は凍っていた。
道中では川上浅又川の川面から霧が上がっている。
水温より気温の方が低いのである。しかし天気は快晴。
ヤブを漕いで廃道を進んで行くのに絶好の日和である。
まずは旧道方向に進路を取り旧ホハレ峠のお地蔵様に
新ホハレ峠道突破と道中の安全を祈願した後、徒歩で
の出発地点となる新旧道分岐点に戻って来た。


  新旧道分岐点にて装備をバイク用から廃道ヤブ漕ぎ
 用に換装する。55lのアタックザックが圧巻のグロメ
 ク氏。靴はスニーカーでは無くヘビーデューティーな
 長靴をチョイス。私は防災用にと買ってもらった25l
 のザックにテントや着替え、ストーブなどを無理矢理
 詰め込み、合羽や鋸、ロープなど入らなかった装備は
 ザックのサイドの紐にカラビナで固定した。GPS端末
 は衛星を捕捉し易いようにショルダーハーネスに固定。
 靴はローカットのゴアテックス仕様トレッキングシュ
 ーズをチョイスした。この我々の勇姿を是非とも写真
 に収めようと探索前に記念撮影も敢行した。

 慣れないヤブ漕ぎ装備に換装するのに手間取ったの 
と悠長に記念撮影なんぞしてたので探索開始は0900
時と遅めである。歩きながら先程の記念撮影をプレビュ
ーするグロメク氏はなんて中途半端でショボい壮年二人 
組なんだとボヤいていた。氏はこの日の探索の為に敢
えて少林寺並みの荒行的業務職に就き体脂肪率を3%
という驚愕の数値まで絞り込んできたというから恐ろし
い。私の方は各種装備の動作確認と最適化、そして体
力作りの為に暇さえあれば京都北山に入り、登山道や
林道を歩きまくった。にも関わらずデジカメにそれらが
全く反映されていなかったのが悲しい。


  しかしデジカメで撮った画像をプレビューしながら
 歩くことができたのはここまでである。新旧道分岐点
 より150m程進んだところで道が完全に途絶えており、
 更に追いうちをかけるように山側斜面から横向きに生
 えた木が通せんぼしているのである。探索三週間前に
 ダムの堪水状況を確認しに訪れた時にも新ホハレ峠ま
 では行ってみようとここまで歩いてきたが、この光景
 を目の当たりにして前進を断念した。地図やGPSを見
 る限りでは峠まで200mくらいなので簡単に行けるだ
 ろうと思っていたが甘かった。のっけからこのような
 状況なのでまったく先が思いやられる。


 この難所を越える為に山側の斜面を登り迂回することにした。かなり急 
な斜面で背負っている装備類は全部で17〜18kg程あるのでなかなか辛い。
まだ歩き始めて間もなく身体も充分暖まっていないし、ただでさえスロー
スターターなので早くも息が切れる始末である。2m程登った後、斜面を
トラバースして崩落箇所を迂回するのだが薮や木が邪魔で前進が困難極ま
りない。滑落しないように斜面に生えている木やその木の枝に掴まりつつ、
鈴竹などの薮を押し退けて進まなければならないのだ。 背中のザックが木
の枝や薮にひっかかるのも泣き所だ。55lのアタックザックを背負ってい
るグロメク氏は最初かなり悪戦苦闘していた。それにしても氏の胴回りよ
り太いザックを背負って薮漕ぎをする様はなかなか異様な光景であった。
巨大なザックが重戦車の如く薮をなぎ倒しながら進んでいるのである。


木にぶら下がりつつ薮を押し退けて進む
 


作業道跡に復帰するも状況はあまり芳しくはない


  なんとか崩落箇所を迂回して峠道に復帰するがとこ
 ろどころ小規模な崩落が見受けられ、またススキなど
 の薮が覆いかぶさり普通に歩けない。ここでウエスト
 バッグのドリンクホルダーに固定していたチョコレー
 トを入れたタッパが無いことに気がつく。おそらく先
 程斜面をトラバースした際に紛失したのだろう。少し
 戻って探してみたが無駄であった。前回までの探索で
 内心ダサいと思いつつ嫌々使っていたナンカイ製ウエ
 ストポーチをやめ、新たに登山店で新しくカッコいい
 ヤツを購入したのであるがこれでは全くダメである。
 愚かにも貴重な食料を無くし自然を汚してしまった。


険しい道中の最中振り返ると…

 
先程ハンターで登って来たホハレ林道が望める

 ススキと鈴竹の薮をかき分けて進んで行くと不意に 
広場のような所に出た。0920時、紛れも無くここが
新ホハレ峠である。峠の位置が私がGPS地図上で予測
していた位置より手前だったことが意外であった。
薮のせいで展望は望めなかったがどこか安堵感の漂う
空間である。いくつかの樹には此所へ辿り着いた方た
ちの名前が刻んであった。坂内から新ホハレ峠までは
ある程度人が入っているらしく斜面を迂回せねばなら
ない箇所はあったものの、峠道は人が一人歩ける程度
に刈り払いされた痕跡があった。しかし先はまだまだ
長い。峠で一服することもなく出発することにした。

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