続・ホハレ峠2

 事前調査では沢を下っていった先に二つの砂防ダム 
があるはずなのだが、歩けど歩けど一向に見えて来な
い。前述の通り眼鏡は雲るは汗と沢歩きでブーツの中
ばかりか全身びしょ濡れである。体力の消耗も激しく
集中力、思考能力ともに著しく低下している。こんな
状況でどう猛な野生動物に襲われればひとたまりもな
い。これではいけないと思いつつポリス笛を吹き続け
ながら前進する。途中、沢歩きを嫌い、左手の岸に上
がり旧道跡とも獣道跡ともとれる道なき道を歩くがや
がて黒谷から大きくそれて、断崖に辿り着く始末であ
った。

  断崖から再び黒谷の沢に戻る時だったか、グロメク
 氏がとんでもないものを発見した。熊の足跡である。
 泥状の土に物凄い爪跡がついているのだ。「熊に頭ぶ
 っ裂かれて云々… 」のくだりが有名なモチモチの木の
 話のエピソードも強ち大袈裟ではないと思い知らされ
 た(残念ながら撮影する余裕はなかったのである)。
  このような状況下で意識朦朧としながら前進するの
 はさすがにまずいということで、黒谷の沢に戻って休
 憩をとることとした。暑さと蒸れとでたまらずライデ
 ィングジャケットを脱ぐと、たちまち身体から湯気が
 たちこめるのであった。

 休憩中にライディングジャケットの下に着込んでい 
たフリースと、靴下の上に重ね履きをしていたネオプ
レーン素材のオーバー靴下(略してオバ靴下)を脱い
だおかげでかなり歩き易くなった。またおやつタイム
時にグロメク氏にいただいたキットカットのおかげで
体力も回復し、再び意気揚々と歩きだす。
 休憩地点から出発してすぐに砂防ダムが見えてきた。
沢歩きを始めてすぐに現れるだろうと鷹をくくってい
たが随分とここまでの道のりは険しく長かった。気分
を良くして記念撮影をしたのも束の間、ダムから先に
下っていけそうなルートが見当たらないのである。



砂防ダムの堤の上で記念撮影をするのも束の間
 
断崖絶壁を歩くのを強いられる

  砂防ダムの右手の崖に道らしきものが見えたので、こちらへ迂回して進
 むことにした。が、しかしである。いざ崖を登ってみると道なんてものな
 どなく、とんでもない急斜面が立ちはだかるのみであった。これは戻った
 方がいいんじゃないかと振り返るもほとんど垂直に見える急斜の遥か下に
 沢が流れているのが見え目眩を覚えた。とにかくここは登りきる他ない。
  が、この急斜面の途中に巨木の根っこみたいな物体が行く手を阻む。私
 はこれを越えるのに実に難儀したが、グロメク氏は軽い身のこなしで駆け
 上がっていくのだ。そればかりか自身の携帯電話を取り出して写メもとい
 記録活動に余念がない。恥ずかしながら私は全く撮影する余裕などなかっ
 たのである。しばらくこの斜面を下に流れる黒谷の沢と平行に進み、傾斜
 が比較的緩やかになったところで転げ落ちるように再び沢に降り立った。



再び沢に降り立つともう一つの砂防ダムが見えてきた

 

 


ダム手前の支流の奥に車道の痕跡が見られる

 断崖絶壁から再び沢に降り立つとすぐに二つ目の砂 
防ダム「黒谷第一砂防ダム」に辿り着いた。右手には
はっきりと道が確認でき、それも徒歩道ではなく車道
である。この道は門入方面から我々がこれまで歩いて
きた黒谷とは別の谷筋を辿っているようだ。これが新
ホハレ峠へと続く「王子製紙の作業道」なのだろうか。
 この道を門入へ向けて進む。道とは言うものの無論
のこと廃道化しているのであるが。それでも我々がこ
れまで辿ってきた行程を考えると遥かに歩きやすい。

  砂防ダムまでは車両でも来れそうだと思ったが、途
 中道路幅の九割が決壊した箇所や、橋が完全に流れて
 しまっている箇所がありそれも叶わなさそうだ。
  更に歩を進めると杉木立が見えてきた。久しぶりに
 杉の木を見た気がする。また杉の木があるということ
 は人里が近くにあるということである。この辺りまで
 来ると微かではあるがバイクのタイヤ痕も確認できた。
 どこか安堵感が漂う。
  そして我々廃道特別探索隊の目の前に現れた物は!?
             続・ホハレ峠3へ続く

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