古坂峠3

 徒歩で歩き出そうとしてふと崖の下に目をやると現 
道が見えるではないか。どうやらこの先、いくつかの
ヘアピンカーブで一気に下まで下っているようだ。
すぐ下に現道が見えているというのにそこまでが果て
しなく遠く険しいのだ。そしてこの画像でも気がつい
てもらえると思うが、ここまでの道程でいくつか人為
的に切断された倒木が見られた。治山活動の一環であ
ろうか? もしくは私と同じ志を持つ者が再び車両で
の通行を果たすべく開拓したものなのであろうか?後
者であれば物凄いガッツの持ち主である。倒木一本切
断するのにかなりの労を費やさねばならないからだ。


  徒歩で薮の海に飛び込んで行く。ここまで来ると道
 の真ん中にまで木が生えているのでそれらを避けて進
 まねばならないのだ。路面に生い茂る草の中に倒木や
 落石が隠れており歩くのも厄介な道である。
  背丈程あろう薮が道一杯に立ちはだかり、時には進
 路を山側の斜面へととらなければならない。このよう
 な道をハンターと共に前進することが果たして可能な
 のか?実は歩くのに必死でそんなことを考える余裕は
 全くもってなかったのである。


恐ろしいことに落石までもが苔蒸している
 
ヘアピンを曲がった先 藪漕ぎは果てしなく続く

  植生の猛威は果てることなく、薮を漕いで抜けたと
 と思ったらまた次の薮が壁となり立ちはだかる。この
 繰り返しなのである。それでもやっとの思いで1つ目
 のヘアピンカーブを曲がることができた。しかしその
 先に待ち構えていたのは更に強力な植生群であった。
 この緑の塊を前にしてハンターでの前進は到底無理と
 判断した。"ハンターでの"では無い。徒歩で前進する
 気力も失せてしまった。相次いで立ちはだかる植生に
 ついに屈服した瞬間である。それでもこの先この廃道
 がどうなっているのかを把握するべく、来た道を引き
 返し、城東トンネル北側より徒歩にて偵察することに。


 これが城東トンネル北側の旧道入口である。完全に 
植生に侵食されもはや道と呼べる代物では無くなって
いる。昨年真夏に国道418号通行不能区間、所謂密林
地帯として恐れられている区間を走破したが、あれを
遥かに凌駕する植生の濃さである。徒歩ではあるが、
この中へ突入するのにはかなり躊躇した。
 この植生群の中、旧道となってから育った木がいく
つか立っておりそれらをいちいち避けて進まねばなら
なかった。 地面には不法投棄された廃材などがそこら
に散らばっており、もちろん蜘蛛の巣も一杯である。

  植生の森を抜けると今日見てきた中で一番の太さの
 倒木が立ちはだかるが徒歩なので軽く越えられること
 ができた。ハンターでも幸い今の私には丸太越えのス
 キルが身についているのでなんとかなりそうだ。ただ
 し丸太の先に沢が横切っており、低くはあるが橋が架
 けられているみたいなのだ。もし失敗して左右どちら
 かに弾かれれば沢に転落である。綺麗な沢ならまだし
 もドロドロヌタヌタの泥状の沢である。考えただけで
 も恐ろしい話である。
  この丸太を越えると1つ目のヘアピンカーブがあっ
 た。見上げれば頭上に先程諦めた箇所が見えている。


 しかしカーブを曲がるとまたもや緑の塊が立ちはだ 
かる。 先程前進を諦めた箇所以上の植生の濃さである。
この薮を進めば蜘蛛の巣どころかコガネグモの雌の腹
のぷっくりしたヤツが顔にへばりつきかねない。蜘蛛
ならまだマシで大百足や蝮に噛まれるやもしれない。
完全に戦意喪失である。恐るべし古坂峠。 ハンターで
はおろか徒歩での走破も叶わなかったのだ。路面崩落
や土砂崩れでは無く、まさに植生の猛威に撤退を余儀
なくさせた古坂峠。これらの力が弱まる晩秋、もしく
は雪解けの頃にまずは徒歩にてリベンジを果たしたい。


 今回走破することはできなかったが、近場でこのような強烈な廃道が存在していることを身をもって
知ることができ、このうえない喜びを感じている。植生だけではない。赤茶け朽ちかけたガードレール、
苔蒸した道…見どころ満載の旧廃道である。 岐阜県道352大西瑞浪線、神大滝林道などを走破してきて
どこか燃え尽きた症候群のような状態に陥っていた私であるが、まだまだ井の中の蛙大海を知らずなの
である。 情報を提供してくださったR173-NETのあきら氏に再び感謝である。         

前に戻る 探索トップへ戻る