神大滝林道1

 
ライダー御用達の某地図に「超ハードなガレ場あり 腕に自信のある人のみ通行可」と記されている
道がある。私が運転免許を取得して間もない頃の年度版には「自然の強さを全身で知る」などとある。
この林道の存在と荒れっぷりの凄まじさは以前から耳にしており、いつかは訪れようと思っていたが距
離が1kmと短く、ここをターゲットとするには少々物足りない気がしたので未踏のままであった。しか
し魑魅魍魎がうごめき犯罪の温床
となっているとされる某巨大掲示板群の廃道スレッドにて廃道の"廃"
のセクションが濃縮されており腕試しにどうか?という書き込みがあったのをみて、やはり避けては通
れない道なのだと思い急遽現地へ赴くことにした。

 天下の大動脈、国道1号鈴鹿峠越えの真っただ中に 
現れる分岐がある。その分岐に入り西へと進路をとる
と林道神大滝線の標識が現れる。更にその先には最近
設置されたと思しきゲートが施されている。しかしな
がら歩行者や我々廃道探索家への配慮であろうか、左
側2/5程がくぐり易くなっており、今回この配慮に甘
えさせてもらうこととした。ハンターのミラーの付け
根くらいの高さがあったので、降車してバンクさせつ
つ"押し"で通過。ゲートを過ぎると舗装された道はぐ
んぐんと標高を上げていき、やがてダートとなる。


 
 道端の桜が満開である。自然の厳しさはまだ感じない
 
標高が上がったところで舗装が途切れた。

  路面状況は多少はガレているもののハンターでの通
 行に問題はなかった。大雨で大量の水が流れて掘り下
 げられていったのか段々と道が溝のようになる。やが
 て道の半分以上が崩落している箇所に辿り着いた。し
 かしここもまた歩行者や我々廃道探索家の為に木の板
 を渡してくれている。 が、何度もこのような配慮に甘
 えていてはいけない。板を渡るのは遠慮させていただ
 き右側の地道を通らせてもらうことにした。ここで前
 方から二人の歩行者が歩いてきた。挨拶をすると「こ
 んにちは!あと少しで峠ですよー 」と声をかけてくれ
 た。意外とあっさり峠に到着できそうである。


 しかしその目論見はすぐさま砕け散ることとなる。見事なまでのV 
字溝と化した道の先に岩の壁が立ちはだかっていたのだ。画像だとた
いしたことないように見えるかもしれないが、岩の高さは私の腰から
胸くらいあり角度も60度から80度くらいはありそうである。助走を
つけて一気に登ってしまいたいところだが岩までの路面がこれまた非
常によろしくない。更に山の方から水がしみ出してきているのか岩が
ヌレヌレなのである。これだけの悪条件が重なった難所を目の前にし
て、ライダー御用達の某地図の「自然の強さを全身で知る」のコメン
トは決して大袈裟では無く、重く五臓六腑に響き渡ることとなった。
 はっきり言えば現時点でハンターに乗ったまま越えられるテクニッ
クは私には無い。度胸で突っ込んでも弾き返されるか最悪ハンターご
とバク転して、ハンターも私も自走不可となるケースが予想される。
ここを越えればすぐそこに峠があるというのに。


決して放置バイクではない。

  そこで一番無難な方法、ハンターを持ち上げること
 にした。というよりここを越えるにはこれ以外の選択
 肢は無いのである。右端の斜面を少々整地して一速全
 開で突っ込む。すると予想通り後輪が岩に差しかかっ
 たところで自動遠心クラッチが滑りエンジンがうなり
 声をあげて立ち往生。ここで手際よくエンジンとガソ
 リンコックをオフにする。あとは力勝負である。岐阜
 県道大西瑞浪線でやったように、後ろから押し上げ、
 上に回りこみ引っ張り上げるのである。しかし路面は
 スリッピーで踏ん張りがきかない。油断するとせっか
 く引っ張り上げたハンターがズルズル下がっていくの
 である。 道路脇の笹もいい具合に邪魔である。


 奮闘すること30分。なんとかバイクを引っ張り上げ 
ることができた。この時点で本日全ての筋力を消費し
たと言っても過言ではない。しかしながら峠に到達す
ることができた。峠さえ越えられればあとは下るのみ
である。どんなガレ場も段差も万有引力の法則に従っ
て下っていけばいいのである。使うべきところでドー
ンと使う。資産も筋力もかくあるべきなのである。
             神大滝林道2へ続く

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