八井谷峠1

 昨年は主に京都より南北に位置するエリアの酷道、廃 
道を探索したのだが、今年は西に位置するエリアにも食
指を伸ばすこととした。そこでやってきたのは兵庫県は
但馬地方。今回のターゲットは国道9号線但馬トンネル
上を通る旧道「八井谷峠」である。薮が物凄いというこ
とだけは以前から知っていたが、それ以上の事前調査な
どはせず二次変速比もノーマルセッティングで挑むこと
にした。季節は4月初旬。八井谷峠最大の敵であると思
われる薮もこの時期ならまだ芽も出ていないであろう。
通過は楽にできるものと過信していた。


  今回は但馬トンネル南側から北上するルートを選ぶ。
 トンネル手前に右に逸れる道がある。ここが八井谷峠へ
 と続く旧道の入口である。しばらく舗装路が続くが、但
 馬トンネルの坑口の真上のところでダートとなる。

 舗装が切れ、しばらく進むと右カーブになっていた。 
そこを曲がると視界が開けるのだが、どこが道になって
いるのかよく解らない。路面は雪解け水が流れて来てい
るのか水貯まりだらけでヌタヌタである。
 一瞬、直進するものと思ったがその先には森が立ちは
だかっており道の痕跡はなかった。右手に微かに轍のよ
うな跡があったので半信半疑ながら進路をとる。


  それにしても最初は道では無く誤って沢に入りこんで
 しまったのではと思った。しかしながらこの沢は斜面を
 ヘアピンカーブで上へと続いていることから紛れもなく
 人が造った道なのである。沢と化した轍は結構な深さが
 あり、握り拳大の石もゴロゴロ転がっている。今回二次
 変速比もノーマルセッティングだったこともあり、バイ
 クを降りて押さざるを得ない状況であった。楽に峠まで
 到達できるものと思っていたが、まさかいきなり"押し"
 が待ち受けているとは考えてもいなかった。


 汗だくになって沢と化したヘアピンカーブを登った後 
に待ち受けていたのは丸太製の橋であった。橋の下は深
さ2メートル程の溝になっており、転落したらタダでは
済みそうにない。 更に困ったことにこの丸太、湿って朽
ちかけている。また丸太と丸太の間に微妙に隙間が開い
ており最悪ハンターのタイヤがスッポリはまってしまい
そうだ。何度も撤収しようかと悩んだが、ここさえ渡っ
てしまえばもう難所はないだろうと考え突破することに
した。 一番右端の2本の丸太にハンターを載せ、左足を
着きつつゆっくりと慎重に渡りきった。


  決死の思いで丸太製の橋を越えた先に待っていたのは
 草に埋もれた道と倒木の数々であった。この季節だった
 からよかったものの、夏などは完全に薮に覆われて道を
 見失うことは間違い無い。しかしながら先のガレ気味、
 轍が沢状態のヘアピンに比べるとずっと進み易い。
  思いもよらなかった2つの困難箇所を越えた安堵感も
 あり、このままゆったり峠まで行けるものと思っていた。
 が、しかし…。          八井谷峠2へ続く


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