矢ノ川峠II〜熊野市側〜その2

 倒木地点を越えるとそれはすぐに姿を現した。もは 
や説明不要であると思うが矢ノ川峠を車両通行不能に
した橋落下地点である。実に一年半ぶりであるが復旧
されることもなくあの時と変わらない佇まいであった。
 ここから更に矢ノ川峠を目指すことにした。前回の
探索では一眼レフカメラのフィルムが無くなり、更に
サブカメラの携帯電話も忘れてしまい、峠から橋落下
地点までの路の様子を記録することができないという
失態を犯したからだ。今回は忘れ物が無いか入念に確
認して出発することにした。ここから峠までは確か三
十分も歩けば辿り着けるはずである。

  橋の山側に登山道規模のエスケープルートが確保さ
 れている。以前訪れた時はただの山の斜面という印象
 だったのだが、あれから多くの人が歩き道となったの
 であろう。自転車を担いで越えるだけでも精一杯に思
 えた箇所であるが、今ならバイクでもなんとかなりそ
 うな感じだ。ただし僅かであるが水が流れている岩の
 斜面があるのでかなり厳しそうだ。実際徒歩でもこの
 ヌレヌレの岩で足が滑り難儀させられた。これではハ
 ンターで"押し" で登るのもままならないだろう。これ
 はやはりロープ で引き上げるのが確実で安全な手段で
 はないだろうかと考える。



尾鷲側から見た橋落下地点迂回ルート
 
橋落下地点を越えるとしばらく穏やかな状況が続く

 続いて大規模な土砂崩れである。前回の探索で橋落 
下地点の他にバイクでは絶対に越えられないと感じた
箇所が二つあったのであるがここはその一つである。
しかし驚いたことに前回訪れた時よりも土砂崩れの斜
面の角度が緩やかになっている。更に先程の橋落下地
点の迂回ルートと同じく微かに徒歩道スペースの幅が
確保されているのだ。最初はこれはオブローダーズハ
イ現象もしくはこれまで数々の廃道やアタックコース
を越えてきたせいで感覚がおかしくなったのではと疑
った。しかし頼りはないが確かに道は存在している。
人が通ったことで道となったのである。

  続いてもう一つの大規模崩落地点である。道がごっ
 そりと抉られてしまっている状態だ。やはりここも微
 かにラインが確保されており、バイクでの突破はなん
 とかなりそうなレベルまで復旧されていた。ただし滑
 り易いうえかなり急な坂となっているのでパワーの無
 いハンターでは厳しそうだ。そして言わずもがなであ
 るが矢ノ川峠の路は谷が深く一歩間違えばたちまち奈
 落の底である。以上のことを念頭に置かないと即死は
 免れない。しかし前回探索時の絶望的な状況では無く、
 なんとも微妙な状況になっているのが実に悩ましいと
 ころである。


大崩落地点熊野市側。
 
大崩落地点尾鷲市側。僅かにラインは存在する。

 大規模な崩落だけでなく、小中規模な崩落も幾つか 
越えて再び矢ノ川峠に立つことができた。今回で二度
目であるがやはり峠からの遠景は素晴しいものがある。
しかしながら今回は充実感よりも、ハンターで越えら
れるんじゃないかというなんとも微妙で悩ましい課題
を抱えてしまったようである。などと考えている折、
CRM80が矢ノ川峠を突破したとの報が飛び込んできた。
またしても廃道最強CRM80に先を越されてしまった。
ともかくロープワークによるハンター引き上げ術を体
得し、無論複数人でハンターらしく爽やかな矢ノ川越
えを来年度の目標にしたいと思っている。    


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