矢ノ川峠II〜熊野市側〜その1

 2006年5月、今年もまた待ちに待った輝ける大型連休がやってきたが当の私はと言えばいろいろと
あって完全に打ちのめされていたのである。何もする気力が起こらずこれでは部屋の片隅で泥と化して
しまう。このままではいけない。泥に沈んでなるものかと己に鞭を打ち、ハンターにテントとシュラフ
を積んで部屋を飛び出したのである。行くアテなど無かったがとにかく南を目指すことにしたのだ。

 R169を南下しザンギリ林道を通ってR425へ出よう 
としたが林道起点を見逃し、気がついたら池原ダムま
で来てしまった。R425を尾鷲方面に向かって走りなが
らこの先どうしようかと考える。尾鷲と言えば矢ノ川
峠である、矢ノ川峠と言えば熊野市側からはまだ未探
索だし、三木里から矢ノ川峠旧道へ繋がっている林道
八十川(谷)林道もどうなっているかずっと気がかりで
あった。よし、それではこの連休は矢ノ川峠界隈を集
中的に探索しよう。R425より備後川林道に入り、更
に佐渡林道を東進して矢ノ川峠旧道熊野市側の入口に
やってきたのであった。

  旧道入口に到着した時には既に正午を回っていたの
 であまり悠長にしていられない。すぐさま探索開始で
 ある。御覧の通り荷物は満載、今回は久しぶりの単独
 行だったのでギヤセッティングは街乗り仕様のまま無
 理せず難所はクレバーに"押し"で行くことにした。
  しばらくはフラットな路面が続き、旧道でよく見ら
 れる背の低いコンクリ製ガードレールも所々に残って
 いる。非常に快適な旧道ライディングである。と言い
 たいところだが矢ノ川峠は全国に名立たる横綱級の廃
 道である。このままで済むわけはもちろんなく、間も
 なくするとこれでもかと言う程道がガレてきた。


山の斜面から石が流れ落ちてきたガレ路面
 
岩盤がむき出しの段差路面

 街乗りハイギヤードセッティングだったのでガレの 
登りなどが心配であったが、荷物満載が効を奏して後
輪タイヤに絶妙なトラクションがかかり、難所をもろ
ともせずユルユルと越えて行くのであった。
 道幅が半分程崩落した難所も二輪二足で確実に路面
をとらえゆっくり慎重に通過。これができるからハン
ターはやめられない。ここまではフラット路面→難所
→フラット路面→難所とメリハリのある程良い行程が
続いてきた。このままなんとか矢ノ川峠を通行不可の
廃道に追いやった橋落下地点まで辿り着きたい。そう
思った矢先である。

  身体程の大きさの落石が行く手を阻む。足の短いハ
 ンターはこの手の箇所が実に苦手なのである。落石や
 岩を乗り越えようとしても亀の子状態になってしまう
 からだ。例に漏れず落石に乗り上げたまま立ち往生す
 るハンター。ここまでは跨がったまま登って来られた
 が降車を余儀無くされる。乗り上げて浮いている後輪
 と路面の間に石を敷き詰めて"押し"でこの難所を越え
 ることができた。廃道探索オフシーズンの間に数々の
 アタックコースで荒行を重ねてきた成果である。
  旧道入口からだいぶ登ってきたし、そろそろ橋落下
 地点のはずであるのだが。


 落石の次は倒木である。ここまで来る途中にも倒木 
はあったのだがそこは辛うじて乗り越えた。が、この
倒木は少し厄介だ。実にイヤらしい倒れ方である。ど
うするべきか立ち止まって考えていると尾鷲市側から
一人の歩行者がやってきた。挨拶をすると「このすぐ
先、橋が落ちて行けませんよ」と教えてくださった。
 無理してハンターに乗ったまま橋落下地点まで行く
必要性もあまり無いと考え、ここでハンターを降りて
徒歩で進むことにした。倒木に近づいてみると、石を
敷き詰めてバイクで乗り越えた痕跡があった。やはり
上には上がいたのである。矢ノ川峠IIその2へ続く


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