岐阜県道352大西瑞浪線3

 岩盤&巨大落石セクションを越えてしばらく進むと視 
界が開けると同時に何やら家屋が現れた。廃茶屋「いさ
まつ」である。断崖絶壁に建てられており、 茶屋内から
の眺めは壮観だったと思われる。 入口には侵入者を阻む
為のバリケードが施されていた。廃墟によくみられる処
置である。場所が場所だけに落書きなどもされていなく、
保存状態も良好な物件である。五月橋からここまでの区
間、休憩できるポイントが全く無く、難所続きだったの
で体力の消耗が激しい。この先もタフな探索が続きそう
なのでゆっくり休憩して英気を養うこととした。


  いさまつから少し進むと何やら建造物が現れた。どうやら公衆トイレの
 ようである。昔は観光地として栄華を誇っていたことが偲ばれる。
  そういえばここへ辿り着くまでに一度だけ人とすれ違った。ガレ激坂を
 越えた直後、ハンターに跨がってうなだれていた時に前から3人連れの家
 族と思しき歩行者がやってきた。「一家3人で廃道探索か。おめでてーな」
 と思いたいところであるがそうではない。この県道352大西瑞浪線は遊歩
 道のコースとして使われてるらしい。常識では車両がいるはずのない道で
 バイクに跨がっている人間がいるのをみて驚いた様子であった。こちらか
 ら「こんにちは」と挨拶を交わすと、その家族連れの父親とみられる人物
 は「えらい道を走っとるなー。この先、急な坂になってるから大変だで!」
 と半ば呆れた様子で声をかけてくれた。


 トイレの先はかなりRのキツいヘアピンカーブとなっ 
ており、曲がった先には先程のガレ激坂以来の急勾配が
待ち受けていた。またヘアピンを曲がらずに真直ぐの先
には僅かながら道らしきものが確認でき、地面には木の
角材みたいなものが散乱していた。後から気がついたの
だが、ここは確か鳥居がある場所のはずである。昨年に
押し寄せた台風や大雨に耐えられず崩れたのであろうか。
 さて、肝心の曲がった先の激坂であるが、恥ずかしな
がら体力も筋力もほとんど余力が無い状態である。この
先の路面状態を徒歩にて偵察し、確実に進むことにする。


 
坂の途中には落石多数
 
坂の上から下を見下ろす

登った先はヘアピンとなる

  偵察の結果、落石はあるもののバイク一台分のライン
 は確保されており、その先も特に障害となりうる箇所は
 見受けられなかった。先程のガレ激坂に比べればずっと
 マシである。坂を登った先はまたもやヘアピンとなって
 おり、ちょっとした広場になっていた。そこから遠くに
 先程渡った五月橋を望むことができる。あの橋を渡った
 のが随分と前のことのように感じられた。実際に橋を通
 過してから既に一時間半以上経過している。
  ともかく、走行に支障のある箇所が無いと判れば一気
 に登るまでである。

 偵察の甲斐もあって激坂&ヘアピンのセクションは難 
無く登り切ることができた。 登り切った先は勾配も無く
なり、路面もいつの間にか草葉が堆積しているもののフ
ラットになっている。そして何やら石碑が現れた。「深
澤峡記念」とある。この界隈は深沢峡と呼ばれているの
はツーリングマップルでも確認できるのだが、その石碑
の後ろはまさに読んで字のごとく深い谷になっていた。
 路面はフラットであるものの崖下が奈落の底だと全く
安心していられない。早くこの廃道を抜け切ってしまい
たいという思いが強かったが、慎重に低速で進む。


 
通行不能を促す看板が現れる
 
徒歩も不可ということか?
 
さらにその先にはゲートが待ち構えていた

  深沢峡記念碑から緩やかに道を上がって行くと道のほ
 ぼ中央に看板が立て掛けられていた。今まで辿って来た
 道の注意を促すものだが敢えて"車両と"限定していない
 ところから、徒歩でもなるべく歩いてほしくないようで
 ある。更にその先には道幅一杯にゲートが設置されてい
 てその先には舗装路が続いているのが見える。いよいよ
 この戦慄の廃道探索も大詰めである。それにしてもこの
 ゲートの脇が恐ろしく狭い。普通、バイクが楽に通り抜
 ける幅は確保されているものだが、車両は絶対通さない
 という意志の強さがひしひしと伝わってくる。

 事前調査でも先程の岩盤巨大落石ペアと並んで困難を 
極めると予想された"第二ゲート"と称されるチェックポ
イントであったが、ここは小柄で軽量抜群の足着きの良
さのハンターに助けられた。脇道の横は言わずもがな深
い谷になっており、途中で立ちゴケなどしようものなら
崖下へ落ちる他無いのである。ゆっくりと慎重になるべ
くゲート側に体重をかけつつ通り抜ける。足を着こうと
するとバレリーナ状態になるフルサイズのオフ車では絶
対したくない。ハンターだからこそできたと言っても過
言では無い。そして遂に第二ゲートを見事に通過!

  更にその先の通称"第一ゲート"も難無く通過。 遂に戦
 慄の廃道、岐阜県道352大西瑞浪線走破達成である!!
 その瞬間大きく雄叫びをあげる。 難関とされる廃道をこ
 のハンターで通り抜けることができた。いや…ハンター
 だったからこそ私のような未熟者でも走破することがで
 きたのだ。このレポートをもしホンダの関係者が閲覧し
 ていたら是非とも言いたいことがある。既に生産中止と
 なったハンターの再生産やニューモデルを出せとは言わ
 ない。 ただ現行のカタログモデルにはあまりにも売れ線
 を狙っているようなバイクしかないのではないか?


 残念ながら欲しいと思うバイクが皆無なのだ。だから 
こそハンターのような味のある遊び心のそそるようなバ
イクを造ってくれることを切に願うばかりである。つい
でに言うとハンターのパーツもぼちぼち欠品パーツが出
てきている。もっと長くこいつと付き合いたいと思って
るので何とかしてくれ!。と、思いを巡らせながら、戦
慄の廃道を後にして帰途につく。せっかく京都からはる
ばる来たんだから付近の旧道酷道も探索すればいいのに
と思われるかもしれないが、残念ながら既に力尽き、そ
んな余力は残っていないのである。        

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