軽岡峠隧道1

 飛騨地方は荘川村(現在は高山市に合併されている)の山深くに木筋コンクリート製の隧道があると
いう。いわずもがな隧道に至るまでの道のりは到底車両などで通過できるシロモノでは無いそうな。
それを聴いて血沸き肉踊るのが廃道探索家なのである。かなり早い時期から今年の夏休みの探索はここ
と決めていた。無論植生に悩まされるのは覚悟のうえである。というよりむしろ夏を心ゆくまで堪能し
てやろうという意気込みの方が強かった。廃道探索家にとっての夏は薮漕ぎなのである!

 今回は私が探索を始めて以来初となるパーティーを 
組んでの探索が実現した。一緒に探索を共にしたのは、
HONDA SL230を操る廃道探索家、絹路氏である。氏
はちょうど昨年の今の時期、
私がR418魔の密林地帯を
訪れたその1日前に走破を達成した歴戦の勇者である。
某巨大掲示板の廃道スレッド内でお互いの生還を讃え
あったのが昨日のことのように思える。あれから1年
後の今日、共に探索に向かうことができたのは単なる
偶然ではあるまい。今回は隧道までのアクセスが比較
的容易とされる六厩側から突入を試みた。


  絹路氏の先導のもと、最初は快調に旧道ダートを走行していたが、やが
 て薮が濃くなり左画像のような窪みがあるところでバイクでの前進は諦め
 ることにした。窪みはタイヤの直径程の長さと深さがあり、ここにハマっ
 てしまったら脱出に困難を極めるのは必至である。今回はパーティを組ん
 での探索なので二人がかりでバイクを担ぎ上げるなどすれば越えられるの
 だが、この先到底通過不可能なセクションが待ち構えていることもこれま
 た必至なのである。今回は峠の隧道をこの目で確かめることを第一の目的
 とし、早々に徒歩での探索にチェンジすることとした。
  それにしても探索時は晴れの天気であったが草木が朝露で濡れておりそ
 れらを掻き分けて前進しなければならない。あっと言う間に全身が濡れて
 しまうのである。朝の寒さをしのぐ為、合羽を着ていたのが幸いであった。


先程の窪みから間もなくすると倒木のお出ましである
 
なんと人為的に切断された痕跡があった

 道幅一杯に生い茂る薮が続いた後、一瞬植生群が途 
切れ視界が開けた。ヘアピンカーブになっているので
ある。こうして少しずつ高度を上げて行きながら道は
先に続いていた。紛れも無くかつては車両を通す為の
道だったのである。そして途切れた植生も先へ進めば
また道幅一杯に広がり我々の前進を妨げるのだ。絹路
氏、私ともにヘルメットを着用したまま歩いており既
に全身草木の朝露と汗でびしょ濡れであった。しかし
このヘルメット一見効率悪そうであるが、転落などの
事故や凶悪な野生動物に襲われた時に身を守る防具に
なる。これに手足のガード類を装着すれば無敵である。

  ひたすら薮を漕いで進むととんでもない崩落箇所が
 現れた。この大規模な地滑りが車両通行不能を決定付
 けたと言えるが、ここまでの道程で倒木の数も半端な
 ものではなかった。最初のうちは有志が切断した痕跡
 が見られたのだが切っても切っても現れる倒木に嫌気
 がさしたのであろう。以後倒木に手を加えた痕跡は一
 切見受けられなかった。また、ここの崩落箇所の手前
 で道を見失い、私の愚かな判断で全然見当違いな谷筋
 をよじ登るハメとなってしまうこととなった。いつい
 かなる時も冷静に適格かつ正しい判断を下さねばなら
 ない。まだまだ弱輩者の私である。



いたるところに倒木が現れる
 
バリエーションも豊富である

 最初は道の真ん中に真直ぐに生えていた草木だが、 
やがてそれらが山の斜面から横方向に向かってニョキ
ニョキと幹が伸びるようになる。これらを巧みに避け
て行くわけであるが、これが進みにくいことこのうえ
ないのだ。いつもリュックに忍ばせている必殺のナタ
で刈り払いながら進むという選択肢もあるが、やはり
無益な伐採は極力避けたいところである。
 倒木や崩落は車両通行不能を決定的にする要因では
あるのだが、こういった植生の障害物も相当手強い。
そしてこの先に軽岡峠の隧道はたたずんでいた。
軽岡峠隧道2へ続く

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