実践ロープワーク〜・ハンター引き上げ訓練・〜

 ハンターでの廃道探索を始めて以来、突破が困難と予想される 
時は必ず滑車付きロープを持参していた。ホームセンターなどで
売られている"ホイストロープ"と呼ばれる物である。ロープ径は5
mmで19Mの長さがあり耐加重は100kgと表示されていた。
 幸運にもこの滑車付きロープの出番はなかったわけであるが、
今思えばそれは本当に幸運だったと言える。というのもハンター
を運悪く崖の下に落としてしまったとする。仮にこの滑車付きロー
プで吊り上げることができたとしても、ちょっとでも力を緩めれば
ハンターはまた崖の下へとズリ落ちていくのである。単独で引き
上げる過程と引き上げた後に如何にしてハンターがズリ落ちてい
かないように固定をするか…。そこのところを全く考慮しないで、
無いよりはあったほうがマシだろうとあまり深く考えずに購入、装
備していたのである。この甘い目論見を鋭く見抜いたのが我がハ
ンターの師匠とも言うべきRoom full of mirrorsの管理人さんであ
った。
 

 サイトRoom full of mirrorsのCT110のページではずっと以前より管理人さんのロープでのハンター
引き上げ理論が考察されていたのである。今回の私の滑車付きロープの件でメールでロープとロー
プワークについて実に多くのことを教えていただいた。そして最初に購入した滑車付ロープ"ホイスト
ロープ"のみでの単独での引き上げは無理と判断して、管理人さんお奨めの9mmクレモナロープ20
Mを購入したのであった。
 このクレモナロープの優れている点は滑りにくく扱い易く丈夫なのである。そしてこのクレモナロー
プの利点を身をもって知ったのは新ホハレ峠探索の時であった。この時は装備の軽量化を図って
6mmの虎ロープを持っていったのであるがこれが滑るわ絡まるわ解れてくるわで全く扱いにくい代
物だったのである。こんな扱いにくかった虎ロープでも探索時難所の核心部では大いに助けられ、
(それどころかロープが無ければ突破はおろか遭難していたかもしれない)未知なる廃道や山野に
分け入る際のロープの重要性を嫌という程思い知らされたのであった。

 さて、話をハンターの引き上げに戻そう。
 新ホハレ峠探索後、それも年も明けてようやくグロメク氏と共にハンター引き上げ訓練をする機
会が訪れた。場所はI山のトライアルの練習場である。練習場の端っこに斜度75度くらい、高さ2M
程の土斜面があり、斜面の上にはロープを固定できそうな頑丈な立ち木があり、まさに引き上げ
を試してみるには絶好の場所である。神大滝林道ではここまでの斜度と高さはなかったがこのよ
うな難所でロープ無しでハンターをズリ上げているので楽勝だと睨んでいた。
 この時に持っていた装備は9mm20Mクレモナロープ×1、6mm1Mのクレモナロープを輪にして結
んだスリング×2、Room full of mirrorsの管理人さんにいただいた7mm1M山岳用ロープを輪にして
結んだスリング、山岳用カラビナ×2。
 まずハンターのフロント側にはステムに、リア側にはキャリアにそれぞれスリングをひばり結びで
結ぶ。斜面上にある立ち木に9mm20Mクレモナロープを結んでメインロープとして垂らす。そしてそ
のメインロープにハンターの前後に結んだスリングをプルージック結びやカラビナを使ったカラビナ
バッチマン結びでズリ落ちないように固定するのである。そして少しずつ下からハンターを押し上げ
たり、上に回りこんで引き上げつつ、下にズリ落ちないようにプルージックやカラビナバッチマンで
固定した結び目も解除しながら上へ上へとずらしていくのである(これらの結び目は手で握ると上
下にスライドすることが出来、手を離すとその場で結び目が締まり固定される。但しテンションがか
かっていないとダメ。)
 しかしここで重大なことに気がつく。カラビナとスリングの数が足りないのであるorz。カラビナバッ
チマンでハンターの前後を固定するには4個のカラビナが必要なのである。そしてプルージックでや
るにしてもスリングがどうしても1つ足りない。全くなんというお粗末なことであろうか。仕方が無いの
でフロント側のみにズリ落ちないようにスリングを結び、カラビナバッチマンで固定するという策をと
ったのであった。
    更にお粗末なことにカラビナバッチマンの結び方を忘れてしま
 う。試行錯誤しながらなんとか結ぶことができたが完全にテンシ
 ョン(ロープではなく我々の)が下がってしまった(´д`;)
  そして実際の引き上げだが、途中までは少しずつズリ上げるこ
 とができた。しかしハンドルやステップが斜面の土に刺さり、また
 斜面から剥き出した木の根っこに引っかかり全く上にズリ上げる
 ことができなくなってしまった。これにすっかり気力も萎えてしまい
 挙句グロメク氏と二人で力ずくで上に引き上げようと試みるがこ
 れがまたウンともスンとも言わないのだ。結局引き上げ訓練はこ
 こで中止。結論として崖に落としたバイクを引き上げるのは困難
 至極。絶対にバイクを崖に落としてならないのだなどと締めたの
 であった。全く不甲斐無い限りであるorz
  この後、ハンドルやステップなどの突起物を外して引き上げたら
 どうか、いやそれならいっそのことエンジンからフレームまで全バ
 ラして少しずつ引き上げてからまた組み上げたらどうかなどと検
 証する始末であった(´д`;)

 そしてこの訓練後、机上の理論を頭に叩きこむだけではダメでもっとロープを実践で使って身体で
覚えなければならないと痛感した。ハンターの引き上げだけでは無く、この先は未知なる藪山へと分
け入る為にロープを使いこなさねばならないのだ。この頃頻繁に読んでいた藪山登山系のサイトで
は藪山の心得として”せめて懸垂下降はできるようにしよう”と書かれていたので、登山用品店でエイ
ト環と環付きカラビナを購入して早速近くの山林で実践してみることにした。

 この頃歩哨用に新たに6mm20Mのクレモナロープを購入していた。山歩き 
用に9mm20Mのロープでは太くてかさばるからである。
 エイト環などの下降器具を身体に取り付ける為のハーネスは長めのテープ 
スリングで代用。さすがにいきなり垂直の崖を下降するのは怖かったので杉
林の急斜面で試してみる。そうすると意外なほど簡単に制動をかけることが
出来、面白いくらいにスルスルと下降できるのである。段々と要領が解ってき
たのでいよいよ垂直の崖で試してみることにする。スリングで代用したハーネ
スはお尻に食い込んでかなり痛かったが全く問題なく下降することができた。
最初は5mくらいの崖だったが、下降する距離を段々と伸ばしていってこのロ
ープで下降できる最大距離の10mの泥壁を降りられるようになったのである。
 


10mの泥壁。ここを下降した。 
 
後に8mm30mの山岳用ザイルまで購入。そして… 

 降りられるようになったら登りたくなるのが人間の悲しい性…。


 ロッククライミング始めますた…(´д`;)
 
家の近くにゲレンデと呼ばれる岩場があるので
暇さえあれば通ってます 


 そして再びバイク引き上げの話に戻そう。
Room full of mirrorsの管理人さんのハンター引き上げ理論では滑車を2つ使用することになっている。
クライミングを始めるまでは恥ずかしい話、はっきりとイメージすることができなかったが、登攀器具や
ロープワークなどをある程度こなせるようになってから改めて目を通してみると成る程、理にかなって
いる。必ずやハンターを崖からズリ上げてやろうとリベンジを誓うのであった。
 
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