樫山林道

 和歌山県は古座川町の樫山という集落を通り太地町へ 
抜ける林道である。終点で高野林道と小匠ダムへ続く道
に分岐する。10年前のツーリングマップには「廃道状態
」と記されていたので、紀伊半島へキャンプツーリング
に出かけた折に立ち寄ることにした。
 和歌山県道田原古座線より池野山川に沿う細道に入り
ひたすら北上していくとやがて集落に辿り着き、このよ
うな未舗装路の入口が現れる。ここから小匠川に沿って
ダートが続くのだが、この先は薄暗く人気も全く無い。
最近車両が通った痕跡も確認できないので 、かなり気味
が悪かったが突入することにした。


  路面はダートかと思いきや、コンクリート舗装が施さ
 れている。しかし木の葉や砂利が堆積しているので運転
 には細心の注意を払わなければならない。
  それにしても本当に静かな道である。木々に陽射しが
 遮られているので薄暗くて本当に気味が悪いのである。
 聴こえてくるのは鳥の泣き声と沢の流れの音のみであり、
 かなりナイーブになっていたが唯一の救いは沢の水が綺
 麗なことくらいか。私は岐阜県は飛騨地方の生まれなの
 で川の水の綺麗さにはうるさいのだが、ここに限らず紀
 伊半島に流れる川の透明さには正直驚いた。

 かなりナイーブになっていたところに突然素堀りのトン 
ネルが現れた。しかも高さ制限の標識付きである。このト
ンネルの出現で一気に気分はハイになった。しかし高さ制
限よりも車幅制限の標識を設置した方がいいと思うのは私
だけではあるまい。トンネル内部は水が溜まっており、石
も転がっていたので結構危険であった。
 相変わらずすれ違う対向車もいなくシーンと静まりかえ
った道が続くのだが、よくよく見るとオフロードバイクが
通った痕跡が確認できた。

  更に素堀りトンネルが続く。気がつくと路面はダートに
 なっている。落石もあったが通行に支障はない。
  最初は薄暗くて気味が悪い林道だと思っていたが、見ど
 ころが多く走り応えのある道である。素堀りのトンネルが
 あるのもポイントが高い。

 トンネルを抜けると上がり坂になり、次第に谷も深くな 
っていく。気がつけば結構な断崖絶壁である。
 綺麗な沢、素堀りトンネル、断崖絶壁。私が林道に望む
全ての要素が揃っている。 もはや先程までのナイーブさは
無くなり鼻歌まじりにハンターを走らせる。
 この先、道が二手に別れており、直進するとそのまま高
野林道に。 右に曲がると小匠ダムへと続く。
 一度は小匠ダムまで行ったのだが、やはり高野林道の方
が気になったので途中で引き返して高野林道に入ってみた。

  高野林道に入った途端、御覧のような道になっていた。
 轍は非常にぬかるんでおりヌルヌルと滑り易い。最近車
 両が通った痕跡は無い。代わりに何か野生動物の足跡が
 確認できた。しかも結構大きい。クマか?
  恐くなったので急いでハンターを走らせると、すぐに
 舗装路に接続した。それも結構立派な四輪車2台がラク
 ラクすれ違える広さのである。どうやら高野林道は完全
 舗装化される運命らしい。一部が旧道として残るみたい
 であるが、樫山林道の方は是非とも今のまま人気の無い
 薄暗い寂しい道のままであることを願うばかりである。




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