兵庫県道327号 切畑道場線

 またしてもライダー御用達の某地図にしてやられた…と、あの時は心底憤慨 
していた。11月頭に神戸市のJR福知山線道場駅の程近くの岩場"百丈岩"へ
クライミングに行った時のことである。普段は地元大原の岩場でクライミングし
ているわけであるが、地元以外の岩場を登るのはこの時が初めてであった。
しかも百丈岩はアルパイン的要素の強い岩場ということでとにかく気合いが入
っていた。ソロでしかもアルパイン的なクライミングとなると通常のパートナーと
のクライミングの二倍以上の時間を要するのだ(ザックや荷物を置き、ザイル
を背負って確保支点を取りながら登り、1ピッチ登りきったら懸垂下降して戻り、
荷物やザックを背負ってまた登るという所謂登り返しという手順を踏まなけれ
ばならないのだ)。単独登攀はまさに時間との戦いなのである。

百丈岩 292m

 当日は朝6時前には京都を出発した。ハンターライドは高速が使えないのが泣き所だ。しかも神戸は
結構遠い。とにかく早く現地に到着して速やかに登り、そして速やかに下降して撤収しなければならな
いので渋滞や無駄のないルーティングを立てていたのである。R9→R423→大阪府道732→大阪府道54
→R173→兵庫県道68→兵庫県道33…とここまでは順調そのものであった。残るは兵庫県道327号切畑
道場線である。これに接続して武庫川沿いに西進すればJR道場駅に辿り着く。道場駅から百丈岩まで
はすぐ近くである。

 兵庫県道327号に入るとかなり路面状況も悪くなり道幅も狭くなった。しかしそこは舗装路である。15kg
程の登攀器具がぎっしり詰まったザックを背負っていたがマシンはハンターである。これしき何のことは
ない。走り続けると武庫川と鉄橋が見えてきた。JR福知山線武田尾駅である。そのまま駅前まで進んで
行くとその先に道は続いているのだが、ポールが打たれており車両通行止めとなっていた。
 ここで地図を確認すると武田尾駅の手前で橋を渡ってから武庫川沿いに西進し、武田尾駅のある鉄
橋をくぐって先に行ったところで再び橋を渡って武庫川の北側を進んでいくのが正しいルートのようである。

 一つ目の橋を渡って西へ走るとなにやら温泉旅館がある。なんというかこれが県道だとは思えないくら
い生活臭の漂う道路であった。ここいらから本当にこの道で良いのだろうかという酷道廃道探索で味わ
うあの感覚が薄らと頭をよぎる。二つ目の橋は完成したてのようで真新しかった。真っ赤なつり橋で四輪
車一台ギリギリ走れるくらいの幅だったのでこれを車両であるハンターで渡っていいのだろうかという気
になってしまった。

 赤いつり橋を渡って武庫川の北側沿いを走って行くとやがて舗装が途切れた。まさか天下の兵庫県道
が未舗装なわけはないだろうと他に道を探してみる。付近を右往左往し、再び武田尾駅まで戻って県道
327号を探す。地図をもう一度開いて照らし合わせると、どうやらやはり先ほどのあの未舗装の路がそれ
らしい。なんということだ。クライミングをする為に移動している最中にこのような険道にブチ当たってしま
うとは。シチュエーションとしては非常にオイシイ展開ではあるが、しかしそんな余裕は皆無であった。
今日はクライミングにやってきたのだ。単独登攀は時間との戦いである。ここで油を売っているわけには
いかないのである。デジカメで写真を撮る時間すら惜しかったので先を急ぐことにした。

 未舗装路に入るとやがて道の真ん中に人為的に頭大の石が置かれていた。これはなるべく車両には
走ってほしくないという何者かによる意思表示である。一体どんな道なのだ。兵庫県道327号とは…。
しかし未舗装とは言え、ハンターなら楽勝である。こんなフラットダート一気に走り抜けてやるつもりでい
たのである。

 しかし先へ進むと道の両端から尋常ではない位のブッシュが覆いかぶさり、人が一人やっと通れるくら
いの緑のトンネルのような状況になっていた。本当にこれが県道なのかと思ったと同時に緑のトンネル
の先にガードレールが見えた。その先に現れた人工物にこの険道の終点を確信したのである。あそこま
で行けばあとは道場駅までまともな道が続いているのだと…。だが、しかしである。

 そのガードレールは本当に険道の終点であった。ガードレールの先は武庫川で崖になっていた。右に
道が続いているものだと思ったが完全に道が無い。一瞬この目を疑った。この道はれっきとした県道で
ライダー御用達の某地図では黄線で引かれている。その道がぷっつりと完全に途絶えているのである。
こんなことがあっていいのであろうか。しばらく唖然としていた。しかし悲しいがこれが現実なのである。

 この後、来た道を引き返し大きく迂回して道場駅に辿り着き、百丈岩も無事に登ることができたのであ
るが、あのブッシュが覆いかぶさる県道を思い出すと釈然としない感情が沸々とこみあげてくる。
 後の調査で先ほどの赤いつり橋ができる前に架かっていた橋は過去の水害で落橋したとのことである。
その時に県道も崩落したのであろうか。

 私の持っていたライダー御用達の某地図は2003年度版である。これには黄線で確かに引かれていた。
これではあまねく全ての健全なライダーが私と同じ憂き目にあうのではないか、、そう危惧して最新版は
どうなのか後日本屋へ確認しに行ったが、道はぷっつりと途絶え崖記号で表記されていたのであった。
 もし平然と黄線で繋がっていようものなら抗議を申し入れてやろうと思っていたが、今回は私の負けの
ようだ。やはり道路というものは生き物であり、例え地図では線で引かれてもいざ現地へ行ってみればど
うなっているか解らないものなのである。まさにこの教訓通りの兵庫県道327号切畑道場線であった。

 尚、兵庫県道327号切畑道場線については当サイトのリンク先であるコルカタさんのサイト「道行く路
で詳しくレポートされているので是非とも参考にしていただきたい。

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