ホハレ峠2007

 2006年に王子製紙の作業道跡を通り抜けてこれで最後だとか言っていたのにまたホハレか!、
このサイトにはホハレしか無いのかと思われる御仁もおられることであろうが、この際もうなんと
思われようが言ってもらおうが構わない。こうなったら所謂道路系サイトの一発屋、円広志になっ
てやるつもりである。

 はてさて2007年11月のことである。最終週には麗しの三連休がやってくる。本当は三連休真ん
中の一日は出勤日であるのだが無理やり休みをとった。2004年から三年連続で"ホハレ"に赴い
ているが今年はどうしようか。今年になってクライミングを始めたので雪彦山地蔵岳へアルパイン
クライミングに行く方向でいたのだが、やはり頭の片隅から"ホハレ"の三文字が消えることはな
かったのだ。なぜか無性にあの極悪なまでの藪を漕ぎたくなっていた。徳山ダムの試験たん水も
開始後一年以上経っているしダム水位も気になる。そしてなにより今年もまた門入の地にこの足
で立ちたいという想いが強かったのである。

 気になる天気であるが毎度のことながら雨にやられている。実は五月にも新ホハレ峠を経由し
て蕎麦粒山へ藪漕ぎ登山を試みたのだが前日の天気予報では晴だったにも関わらず雨に降ら
れて敗退している。その時に思い知ったのはこの界隈では天気予報なぞアテにならない。それで
もアテにしたいのであれば岐阜県美濃地方ではなく福井県嶺南地方の予報を参照するのが賢明
であると学習していたのであった。三連休の二日前の予報では、一日目は曇後晴、二日目は曇
時々晴、三日目は晴後雨である。ところでホハレと言えばこの男、グロ☆メク氏であるが"アナロ
グの権化"、"歩く蓄音機"と世に言わしめた氏がこの夏にパーソナルコンピューターとインターネ
ット環境を手に入れたのである。当然今回のホハレ行きも誘ったが既にネット廃人となっており、
昨年のようにトレーニングを積んでいないのでこんな状況では今度こそ本当に命が危ないとのこ
とで今回は残念ながら共に行くことができなかったのである。

 そこで思いついたのは"王子製紙道跡単独突破"である。今年になってロープワークも習得して
いるし装備も昨年より充実している。これらを如何なく駆使すればなんとかなりそうである。ただ1
つだけどうしてもやりたくないのはあの廃道途中でのビバークである。グロ☆メク氏という心強い
同行者がいても夜は気味が悪かったというのに、単独であんな寂しい廃道で寝泊りなんて冗談じ
ゃない。昨年には無かった技術と装備があること、そして陽が登ると同時に出発すれば門入に辿
り着けるのではないか。門入が無理でも黒谷砂防ダムまではなんとかなりそうだ。

 ということで2007年もホハレ行きが決定したのである!
が、しかし…。

 私を迎えてくれたのはすっかり雪化粧をした奥美 
濃の山々であった(´д`;)今年の初冠雪は例年より
早かったのである。これは全くの想定外だ。しかし
積雪があるのは標高の高い地点だけのはずであ
るし、峠道は緩やかに下っているのですぐに無くな
る筈だという希望的観測で雪用に軽アイゼンとピッ
ケルを持って現地に赴いた。 
 


当初の予定では一日目は暗いうちに京都を出発して夜明け前に新旧道分岐点に到着。そして
夜明けと同時に出発という強行策に出るつもりだったが、前日の夜遅くから雨が降っていたので
すっかり気力が萎えてしまったのである(´д`;)予定を変更して一日目は新道分岐点で幕営して翌
日二日目は夜明けと同時に出発。その日のうちに門入もしくは黒谷砂防ダムまで通り抜ける。
三日目に門入と付近の散策をして旧峠道で帰途につくという計画に変更した。

ということで一日目は新旧道分岐点には15:30頃に到着していた。旧ホハレ峠のお地蔵様にお参
りに行ったが思った以上に積雪している。こんなんで王子製紙道跡を歩くことができるのであろう
か。まだ日没まで時間があったので新ホハレ峠まで進んで幕営することにした。新ホハレ峠なら
見通しもいいし陰気な感じでは無かった記憶があるので幕営も大丈夫である。

    久しぶりの廃道、藪漕ぎということで意気揚々と進
 み始めるが、これが思った以上に手強い。歩き始め
 て五分で既に汗だくであった(´д`;)そして崩落した斜
 面+藪の難所が厄介であった。これに雪が加わるこ
 とにより藪漕ぎグレードがアップしているのだ。斜面
 上のススキや鈴竹が雪で押しつぶされて完全に寝て
 しまった状態になっている。ここを進まなければなら
 ないのだ。ただでさえスリップしやすい藪の茎に雪が
 組み合わさってもう最悪である。鈴竹を鷲掴みにして、
 更にピッケルを突き刺してスリップしないように慎重
 にトラバース。新ホハレ峠に到着した時点で精も根も
 尽きてしまった。 


 王子製紙道跡全行程で新旧道分岐点から新ホハレ峠までの 
区間はまだ易しい方である。この先にはザレやガレ、鉄壁より
も厚い藪が待っている。あれに雪がミックスされているのだ。
この時点でこれ以上進むのを諦めた。慎重に進めば通り抜け
ることはできるかもしれないが一日で門入まで行くのは到底不
可能である。大人しく新旧道分岐点まで戻り(これまた泣ける
程大変であった(´д`;))、明日陽が昇るのと同時に出発して旧
道を使って門入へ行くことにした。 
 


    天気の方はすっかり回復して風もほとんど吹かな
 かったが夜は冷え込んだ。シュラフにくるまっていて
 も背中が冷たくて眠れないのである。固い地面の上
 で寝るのは全く苦にならないのでこれまで幕営時に
 マットというものを敷いたことがなかったが、断熱と
 いう観点からみてその必要性を痛感させられた夜
 であった(´д`;)


 二日目は雲ひとつ無い快晴あった。これにすっかり気を良くして7時 
までに朝食とテント撤収を済ませて出発した。土の道には霜柱が立っ
ており、昨日は水溜りだったところは氷ってパリパリになっている。旧
峠のお地蔵様の前のロープを使って降りる斜面はかなり積雪してお
り、ロープは雪に塗れてかなり滑り易くなっており結構緊張した。しか
しながら緊張したのはここだけで、残りの行程は積雪もあり霜柱も立
っていたがよく締まった道だったので歩き易かったくらいだ。念のた
め滑落に備えてピッケルを握って歩く。ズルズルの斜面にトラロープ
が張られていた箇所もすっかり整備されており、きちんとした段が掘
られてロープ無しでも通過できる程になっていた。渡河する箇所では
ピッケルが役に立った。ピッケルを杖代わりにして石伝いに渡りドボ
ンすることはなかったのである。また黒谷砂防ダムを越えて再整備さ
れた橋の上はツルツルに凍っておりスリップして転倒しかけたがとっ
さにピッケルを突き刺してバランスをとった。これがなければ頭を強く
打って死んでいたところである。 
 



旧道の積雪の具合はこんな感じである 
 
ズルズル斜面にトラロープが渡してある場所 


    門入側の新旧道分岐点には8:30過ぎに到達し
 たので、ちょっとだけと新道の藪の方へと進路を
 とった。しかし猛烈な藪と潅木に加えて、横向き
 に生えている木の枝を跨いだりくぐったりしなけ
 ればならないこの地獄道を10m程進んだところ
 で嫌気がさしてきた。そういえば新道の報告書で
 新ホハレ道の藪は初級レベルだと書いたがこん
 なのが丸一日続くのでとても初級レベルではない。
 よって中級以上に訂正させていただく。そして今
 日はこの新ホハレ峠を辿って来なくて心底良かっ
 たと思うのであった(´д`;) 


 そんなこんなで門入には9:00ちょうどに到着した。朝はカップスー 
プを飲んだだけなのでお腹がすいた。昨年の探索でここで食べる
はずだったパスタと高級ウインナーを今年も持ち込んでいたので
ある。食事をしていると何やら視線を感じたので道の方を見ると一
匹の犬が座ってこちらをジッと見ていた。私でなく高級ウインナー
をである。どうにもバツが悪い感じだったので1個あげることにした。
そしたら別の犬がもう一匹やって来た(´д`;)結局高級ウインナー
3個と魚肉ソーセージをあげるハメになってしまったのであった。 
 


    食事を済ませたのでテントなどの荷物はここに
 置いたままにしておいて元町道を戸入方面へ歩
 いて水没地点を見に行くことにした。昨年訪れた
 時には門入の歴史と地図が記された石碑と東屋
 が出来ていた。その他に何やらコテージのような
 ものを建設中でそのコテージの隣にはキャンプ場
 にあるバーベキューコーナーの炊事場みたいなも
 のも作られていた。これは本当に門入地区をキャ
 ンプ場にして観光地化するのかと思ったが建設中
 のコテージのような建造物には「緊急待避所」みた
 いなことが書かれていた。


 町道では一見家族連れにみえる三人の方がユニック車を使って落ち葉を拾っておられた。ご
主人と思しき男性の方に少しお話を伺う。どうやら徳山ダム方面から門入までは道は繋がらな
いらしく、あくまでダム関係者のみ船舶を使ってアクセスする為の道ということである。後にこの
三人の方は今でも門入に住んでおられるご家族だと知る。

 町道をひたすら歩く。水没地点までさほど遠く 
ないだろうと思っていたがなかなか辿り着かない。
アスファルトを延々歩くのは結構堪える。二年前
にグロ☆メク氏と地獄の行軍をした悪夢が甦る。
天気は雲ひとつない青空なのに何か楽しくない。
それは歩いたこの先に待っているのが戸入が水
没しているという現実だからであろうか。
西谷川の流れはスノーシェードのある地点で止
まっていた。ここから先は川の流れる音は一切
聞こえなくなる。なんとも奇妙な静寂が続く。
 


    結局一時間半ほど歩いて町道が水没する地点に到着。
 頭上の山の斜面に新たに付け替えられた道をずっと行け
 ば船着場と戸入集落の石碑があるとのことだが、どうにも
 行きたいとは思わなかったのである。


 一時間半かけて荷物を置いていた場所に戻ると一人の男性に声をかけられた。この方も
門入出身で週に何回かこちらの家に戻って生活しているとのことだ。いろんなお話を聞かせ
てもらったが特に驚いたことは、まだずっと先になりそうだが、なんとホハレ林道はお地蔵さ
んの居られる峠から旧道を整備して門入まで繋がるらしいとのことである。

今日の午後から天気が下り坂になるとの予報だったので帰途についたが、この後天気は崩
れること無く三日目も快晴であった。毎回ここへやってくると雨に降られるのにどういうことか。
ひょっとしたらホハレのお地蔵様に嫌われているのはホハレマイスターのグロ☆メク氏なの
ではと思ったのであったww

 今回の門入再訪においてなにより嬉しかったのは門入出身の方と知り合うことが出来たこ
とである。もっと色々な季節のこの土地を見たいと思うし、藪山である蕎麦粒山も登りたい。
次は三月頃に訪れたいと思っている。それまでに雪上トレーニングを重ねて技術を磨いてお
こうと誓うのであった。そんなわけで、戦国武将のシミュレーションゲームを作り続けているソ
ソフト会社の如くこのサイトではホハレは続くのである。                    

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